三菱電機株式会社のデジタル基盤「Serendie」で事業領域の枠を越え、工場の運用・保守までをサポートする

FAシステム事業本部 DX推進プロジェクトグループ FAデジタルソリューション事業推進部 次長 兼 カスタマサクセスグループ グループマネージャー 鬼生田禎宏さん

工場の生産工程を自動化するFA機器や関連システムの開発・設計を行うFAシステム事業本部では、2024年からDXを進めるために、デジタル基盤「Serendie」を活用した様々な取り組みを進めています。その1つが、今年の10月から開始したワイヤ放電加工機の「見守りサービス」です。

弊社では、すでにIoTを活用した「iQ Care Remoto4U」(アイキュー ケア リモートフォーユー)というリモートサービスを稼働させており、ワイヤ放電加工機でも2017年からサービスを開始しました。数百台以上のデータを24時間365日クラウドに送信し、集積しています。この「iQ Care Remoto4U」は、異常を示すアラームが発生した後に機械復旧が必要な場合は、お客様が弊社サポートセンターに連絡し、状況を確認して対処方法を検討。その後、復旧するという仕組みです。つまり、機械が停止してからの対応となるため、復旧までに時間を要することが課題でした。

「iQ Care Remoto4U」のサービス開始から8年が経ち、この間に稼働状況やアラーム発生の傾向など、多様なデータが蓄積されました。このデータをデジタル基盤「Serendie」に取り込むことでスタートしたのが、「見守りサービス」です。
これは、AIが常時お客様の機械を見守りながら、これまでに蓄積されたデータをもとに稼働状況や挙動から異常発生の兆候を検知し、異常内容の判断まで行うサービスです。
生産現場ではできるだけ稼働を止めないことが最優先となりますが、この「Serendie」を利用した「見守りサービス」により、異常が発生して機器が停止する前にサポートの開始が可能となったのです。

(↓)三菱電機のデジタル基盤「Serendie」を活用した「見守りサービス」
AIがお客様の機械を見守り、万が一のときもメーカーから積極的にサポートする。

データを共有・活用し、運用・保守の領域に展開

「Serendie」に集約されたデータは、事業領域を越えて共有・活用できる点が大きな利点であり、強みです。FAシステム事業本部では、これまでコンポーネントやシステムの販売が中心でしたが、これからは「Serendie」を利用した運用・保守の領域にも展開する予定です。

まず運用面では、シーケンサ(スイッチやセンサーからの入力信号に基づき、設定条件に従って機械の動作を制御する装置)から得られるデータを活用することで、稼働状況やQCD(品質、コスト、納期)を遠隔でもリアルタイムに把握できるようになりました。弊社製品は世界各国で数千万台が稼働しており、そのデータは各種機器に汎用可能です。
また、これまで現場でしか把握できなかった、人による作業時間のばらつきや作業遅延の要因(機械の異常、素材の不足、人為的など)も、カメラを設置して工程別・作業者別に動画を撮影し、分析することで可視化できるようになりました。
さらに、機械の稼働には電力が不可欠ですが、できるだけ電気代のコストを抑えたいお客様、それよりも生産スピードを優先したいお客様と、求められるニーズもそれぞれです。弊社は機械と電気の両分野をカバーしていることで、双方のデータを総合的に分析することが可能で、個別に最適な運用を提案することができます。
こうした運用データの活用は、単なる効率化に留まらず、機械などの設計などにも反映できる点が大きなメリットです。

保守面では、たとえば工場に新しい機械を導入する際、機械を設計する事業者と、それを稼働させる電気事業者が関わります。もちろん電気事業者も図面からある程度は把握できますが、機械のある部分が10ミリ動くのか50ミリ動くのか、それはどれくらいの速度でタイミングはどうなのかなど、細かな仕様は設計者に逐一確認する必要があり、これには時間を要します。また、その際の細かなやり取りは記録されることが少なく、稼働から時間が経つと対応が難しくなるという課題もありました。
この点、設計と電気の双方のデータを「Serendie」に集約することで、設置作業をより効率的かつ円滑に進められるようになります。さらに、稼働後もデータを参照できるため、時間の経過にかかわらず迅速な対応が可能で、担当者が変わっても情報の引き継ぎや照会をスムーズに行えます。こうした“つなぐ”工程は見落とされがちなものですが、実は円滑な現場の稼働に極めて重要なポイントになります。

弊社はコンポーネントだけでなく機械そのものも提供しているため、その機械がどのように使われ、どのくらいの頻度で部品交換が必要かといった情報やデータも把握しています。こうしたことから、お客様の目的によって、より効率的な運用方法やメンテナンス時期をご提案することができるのです。
FAシステム機器は20年、30年と長期間使用されるケースも少なくありません。その間には当然部品交換が必要になるため、交換部品や代替品の在庫数、納期などの情報をリアルタイムで提供できるよう、現在整備を進めています。
同時に、三菱電機製品以外を組み合わせた設備構成であっても、他社製品の生産中止情報などをあらかじめ「Serendie」に登録しておくことで、早期の対応が可能になります。お客様の課題解決のため、他社製コンポーネントについてもAIを活用したデータ収集を検討しています。

データを異なる角度からAIで俯瞰するその先に

ご紹介したデジタル基盤「Serendie」は、各機器から直接データを受け取ることはせず、複数の機器から収集した情報を一元管理する仕組みです。そのため、手間がかかることもあります。
それは具体的には、工場や部署によって集計方法が異なる場合です。ある工場では「1日の生産量」を24時間で区切り、別の工場では夜8時で締めていることもあります。また、「不良品」という分類でも、手直し可能な製品を含むケースと、完全に使用不能なものだけを分けるケースも存在します。こうしたデータの違いを整理するためには、人による現場での確認が欠かせません。
ただし、もしそうした相違が後で見つかっても、「Serendie」は工場の設備に直接接続していないため、稼働を止めずに設定変更ができるというメリットもあります。

こうして集約されるデータは、シーケンサ、空調設備、各種機器と多岐にわたるため、複数の角度からの分析が可能です。FAシステム事業でも工場設備だけでなく、空調を含めた電力消費を分析するなど、幅広い視点での最適化を進めています。

(↓)FAでの「Serendie」活用図
「世界中がより豊かになること」を目指し、顧客の課題にデジタルでいち早く解決するソリューションを提供。顧客の成功と成長を支えていく。

さらに、AIを使ってデータを俯瞰することで、これまで気付かなかった新たな活用方法が見つかることを期待しています。様々な分析を進める中で新たに取得したいデータがあれば、弊社はコンポーネントメーカーとして、そのデータを取得するための専用機器を自社開発することもできます。
弊社の幅広い事業がそれぞれ持つデータを連携させることによって、より包括的なサービスを提供する、「循環型デジタル・エンジニアリング」を目指したいと思います。

ユニークな内装の共創空間「Serendie Street Yokohama」で、新たなアイディアが生まれることも。