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DX FrontLineアセアンCXの成功から広がる、三菱自動車の顧客戦略

(左)グローバルIT本部 デジタルイノベーション推進部 マネージャー 福里有陽さん
(右)グローバルIT本部 デジタルイノベーション推進部 部長 坂倉克文さん

坂倉 私たちグローバルIT本部デジタルイノベーション推進部では、タイやフィリピンを中心としたアセアンCX推進と、社内全体でのデータ民主化への取り組み、様々な先端のデジタル技術のリサーチ、ユースケース検討など、幅広い役割で活動しております。
過去100年間ビジネスモデルの変化がなかった我々自動車業界は、現在大きな転換期に来ています。
カーボンニュートラルが大きな課題となる一方で、ITジャイアントの視点では車がIoT端末のひとつでスマートフォンと同じ位置付けとされたりしています。これはもちろん、チャンスでもあり危機でもある中、今後はこのコネクテッドサービスや、すでに一部実用化され始めているオートノマス(自動運転)、さらにシェアリングサービスといった収益化の幅もより広くなっていくのも事実です。
この進化している業界の中で生き残っていくためには、変化への対応と現状打破して改革する強い推進力が必要だと思いました。
グローバルIT本部デジタルイノベーション推進部のスローガンであるPALSEは、Proactive、Adventurous、Lean、Stream、Executeの頭文字を取ったもの。
先端のデジタル技術やデータをフル活用して、失敗を恐れず、新しいチャレンジを推進しようというものです。スピードを重視することも重要です。

タレントを集めた内製化
社内のデータ民主化へ

福里 社内・社外から集められた人材は、経験もバックグラウンドも様々です。
現段階では、第一拠点であるタイでの経験をもとに、アセアン他国の現状課題を踏まえてサポートしに行くという形で進めているので、これまでの紋切り型の営業スタイルのような、これはうちの範囲じゃないからやりませんと切ってしまうのでは、うまく行きません。現地の人材にも歩み寄りながら相手の信頼を勝ち得るようにしています。
本来の支援範囲からは少し外れるところも一旦吸収して受け取り、その支援を提供することで相手からの信頼を得て、そこから本格的に入り込んで行く。そんなやり方で、調整しながら進めています。
職種も業界も違う新しい人材も入っているので、経験や考え方の微妙な違いはありますが、お互いに刺激を与えつつ、どんどん修正しながら進む。これが内製化への近道なのではないかと考えます。
現在はデータ民主化のために、現地のセールス、ウェブマーケティング、アフターサービス含めた全体で連携できるシステムを使用しています。しかし、以前はこの連携をしているシステムはなく、全部がバラバラでした。
そんな状況を解決するため、2018年にタイでは、外部ベンダーから提案を受けたシステムに統合し、併せて運用の多くの部分も委託しようとしていました。ところが過去に購入しようとしていたお客様の特徴や希望内容、細かなマーケティング情報が自社には残りにくく、すべて外部へ流れていってしまうのではないか。今は良いけれど将来的に考えたら、社内にノウハウが貯まっていかない。これは良くないと判断して、ここが現在の内製化へと動くポイントになりました。
坂倉 一番大事な、お客様をどうやってセグメント化するのかというコアな部分。これを外に出してしまうと、どうしても自分たちのやりたいことができなくなる。内製化へと引き寄せた瞬間でしたね。
でもそれは、すべてを内製化すればいい、ということではありません。他社のパッケージをカスタマイズして使用していますし、運用も費用を払ってお願いしています。そこは外注でも良い。でも外注するべきではないところをやはり選別していかなければならないのです。

誰よりもお客様を知るための
デジタルタッチポイント

福里 お客様の各種データを統合する「カスタマーデータプラットフォーム」(CDP)を構築し、そこにディーラーの顧客管理システムのデータをまず格納しました。その後、ウェブサイトのアクセスログを追加していきました。お客様が当社のウェブサイトを訪問しただけの場合は、まだ匿名でクッキーだけしかわからない状態になります。
試乗申し込みをするステップまでいくと、実名が入力され、ここで初めて一段階解像度が上がり、お客様情報が明確になります。
そしてこの情報もCDPに格納します。次にお客様がディーラーに行くとディーラーの顧客管理システムに登録され、このデータが再びCDPに連携されることで、ディーラー側でもどんな行動をされたのか判別できます。
もちろん購入された後のアフターサービスでも同様にデータを連携。図の青い丸がそれぞれデータを取得するデジタルタッチポイントになっていて、ここでのお客様との機会を増やすことによって、お客様の接点情報が新たに出てきます。
こうやってお客様のデータがまた蓄積されていく。このデジタルのタッチポイントを作り、お客様のデータを増やしていくこともCXのチームの大きな役割でもあります。

選択と集中で創り上げる
ルノー・日産・三菱自動車

坂倉 ご存知の方も多いと思いますが、3社での提携をしております。その中でのシナジーとして、アセアンの確立が私たちにあります。
アセアン各国は、私たち三菱がリーダーシップを取り、ルノーと日産がフォロワーになってくれます。逆にヨーロッパはルノーがリーダとなり、日産と三菱がそのフォロワーになる。そして日本・北米・中国は日産がメインとなり、ルノーと三菱がフォロワー。このグローバルシナジーが成り立っているのです。
それぞれの補完関係が開発などを含めたジョイントプロジェクトにしっかりと繋がっています。3社がウィンウィンになるものはやるし、ならないならやめようとなる。押し付けられることがないから良い関係値で活動しています。
今後の弊社のさらなる展開として、現在ある考え方や仕組み、コンセプトなどをチューニングしながらアセアンの他の国へと展開していきたいと考えています。
流用できるものをタイ以外の国にもより短い期間で、1年くらいでチューニングしてリリースしていく。そして、社員全体の意識改革、経験だけでやってきたものをテクノロジーとデータで変えていく。統計分析の教育などをやっていく必要もありますが、まずはマインドを変えていくことから。我々が核になりたいと思っています。

福里 セールスが持っているお客様のデータ、その前のウェブマーケティングデータ、アフターセールスのデータ。これらのデータベースがそれぞれにあり、サイロ化していた結果、何よりも大切なはずのお客様がひとつに見えていなかった。
坂倉 お客様は各国、地域ごとに違いますよね。お客様が何を考えているか、もしくはお客様がどのようなことをしたいのか、さらに将来の目標を持っているかなど。やっぱりお客様のインサイト、お客様を誰より深く知るという部分。これが何より大事だと思っています。

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