自律的DXに取り組む環境を醸成する帝人グループの人財教育

DX戦略部 AI戦略推進グループ チーフコンサルタント 柳部太一朗さん

※本記事は、帝人様のDXの取り組みを「DX TODAY」の取材コンテンツとしてご紹介するものであり、横河デジタルが本取り組みの導入・開発・運用支援を行った事例ではありません。

グループ全体でDXを推進していくには、やはり“デジタル人財の育成”が欠かせません。
しかし、スマートプラントなど一部の領域ではDXが進んでいたものの、どうしても専門部署の中で完結してしまい、全社的なデジタル活用につながっていませんでした。さらに、弊社は多様な事業を展開している分、求められるスキルが領域ごとに違い、一律の育成では限界があるという認識もありました。
そうした背景から、従業員のデジタルリテラシーの底上げと、事業特性に合わせた自律的なDXを推進できる人財を育てるため、体系的な教育プログラムの構築に着手しました。

まず、IPAのDSS-Pを踏まえ、各事業のDX推進における基盤となる4つの人財像「ビジネスアーキテクト」、「データサイエンティスト」、「システムアーキテクト」、「サイバーセキュリティ」を独自に定義しました。それらをベースに、各事業に応じた育成ロードマップとキャリアパスを策定したのです。
最初に取りかかったのは、これら4つの人財像の初級教育にあたる、デジタルリテラシーを強化するための3つの教育です。1つめは「リテラシーコース」で、国内外の従業員約8000名を対象に、DXリテラシー標準の5分野(DX概論、テクノロジー、データリテラシー、セキュリティ、業務改善)に基づく教育を提供しました。2つめは、「マネージャーコース」です。こちらは、管理職約1000名を対象に、DXの必要性や背景を理解してもらい、変革に向けたマインドセットの醸成や意思決定を促す内容にしました。
3つめは「アドバンスコース」です。これは「リテラシーコース」で好成績を収めた約2000名を対象としています。当初はデジタル(D)に重点を置いていましたが、途中でデザイン思考やアジャイル思考、課題設定など、トランスフォーメーション(X)を中心とした内容に見直しました。学びの定着や自分自身でのブラッシュアップを促すため、企画書作成ワークを用意。自動で企画書のフィードバックを行う生成AIシステムを導入することで、受講者一人ひとりに適したきめ細かい学習支援を実現しています。

(↓)DX人財ロードマップ(ビジネスアーキテクト人財)
全社員のリテラシー向上から、事業課題を解決する中・上級DX人財の育成までを体系化。

事業課題解決のためのスペシャリストを育成

中級教育では「ビジネスアーキテクト」、つまり、事業課題の整理や企画立案など、DX推進の入口となる役割を担う人財の育成を最優先としました。「業務変革スペシャリスト」と「ビジネス変革スペシャリスト」の2コースを設け、DX企画書の作成など実践的なプログラムを通じて、前者は既存事業の効率化、後者は新規事業開発やビジネスモデル構築を担う人財の育成を目指しています。いずれのコースでも、受講者本人が自身の強みと弱みを把握し、今後の学びに活かせるよう、教育前後のアセスメント結果をフィードバックしています。

2024年度には4事業でPoCを行い、受講者のスキルの向上をしっかり確認できました。これを受けて、2025年度は150名へと拡大しています。受講者からも「普段接することのない他事業のメンバーとのワークを通じて、新たな知見や刺激を得られる場になった」「外部ベンダーとプロジェクトを進める際に、自身の考えを言語化し、明確に伝える重要性に気づいた」などの前向きな声が寄せられました。
2026年度以降は、中級教育の対象事業数を拡大するとともに、AI研修の展開、上級教育の着手に向けて、各事業に適した人財像の明確化を進めていきます。
教育はあくまでも入り口にすぎません。身につけたリテラシーやスキルを積極的に業務で活用できるような社内風土づくりこそが、DX推進の鍵だと考えています。今後も計画的かつ継続的、そして自律的にDXを推進できる人財の育成に取り組む所存です。