
システムを導入してデータは十分揃った。だが、肝心の業務改善や経営判断が進まない──。多くの製造業企業がDXに取り組みはじめて久しいものの、そのような声がよく聞かれます。果たして問題はどこにあるのでしょうか。解決への道筋を紐解きます。
DXを推進してきたが成果につながらない、集めたデータが活用されず、思うような改善や効率化につながらないというケースが多く見られます。分析ツールを導入したり、技術的なスキルを向上させることも必要ですが、その前にクリアしなければならない課題があります。
その一つは、DXの目的がITツールの導入やデータ収集そのものになってしまっていることです。
データはあくまで活用するもの。まず「何を判断するために使うのか」と課題を立て、そこからどのようなデータを集めるかを決めなければなりません。工場には原料や製造工程から得られる多種多様なデータが存在し、現場の生産活動には欠かせないものの、データをただきれいに並べて可視化しただけでは意思決定とはリンクしません。それがうまくいっていない事例の多くは、「まずはデータを集めよう。集めてから使い道を考えよう」と、発想が逆になってしまっている。集めたデータからその使い道を探しても、なかなか活用には至らないのです。
こうして目的に対して必要なデータを選別しないまま収集を続けると、情報量ばかりが過剰になり、どれを見ればよいのか、わからなくなります。相関分析を行うにしても、データが膨大では方向性が定まらず、システムへの負荷やコストばかりが増えてしまいます。データは量が多ければよいということはありません。使いどころが明確であってこそ意味を持ちます。
ダッシュボードの活用においても同様の落とし穴があります。「せっかく集めたデータをすべて見せよう」とする結果、情報過多の画面ができあがってしまう。すると重要な指標が他のデータの中に埋もれてしまいます。さらに、見た目の整ったダッシュボードは達成感を生みやすく、「可視化した=やりきった」という錯覚でDXの歩みが止まるリスクもあります。可視化はゴールではなく、様々な判断を支えるための手段です。
その設計思想が抜け落ちていると、ダッシュボードは実際の判断には結びつかず、参考情報程度にしか使われなくなってしまいます。
(↓)価値を生むデータ活用の基本構造

データはあるのに、なぜ判断できないのか
課題の2つめは、DXに対する期待値が現場・経営・IT部門で揃っていないことです。現場は日々の安定稼働と効率改善を重視し、日単位のデータを必要とします。ところが経営層は月次・四半期単位でのコスト削減や投資対効果を見ています。しかもIT部門はシステムの安定運用やデータ基盤の整備に重きを置いている。このように部門によって視点が異なるのです。
同じデータを共有しても、時間軸も評価指標も異なる状態では、その解釈は一致しません。同じ稼働率の数字を前に、現場が「想定内」と判断し、経営層が「改善余地がある」と捉えるなどのすれ違いが発生します。こうして活発な議論を経ても結論が出ず、意思決定が先送りにされてしまう。さらに、その原因がデータ不足だと誤認されると、「もっとデータを集めよう」「別のツールを導入しよう」という方向に進んでしまうケースも。しかし、問題の本質はデータの量ではなく、データを使う目的と期待値が部門間で揃っていない点にあります。会議でデータをもとに議論しても、最終的には「これまで大きな問題はなかった」「経験的にこの方法が安全だ」という判断に落ち着くのも、データをどう解釈し、行動に結びつけるかが整理されていないために起こる現象です。
課題の3つめは、部門ごと・業務ごとの個別最適です。データの収集方法、単位、定義が統一されていないため、横断的な分析が難しくなっているのです。「稼働率」「歩留まり」「異常」といった基本的な指標も、部門によって算出方法や意味合いが異なる場合も少なくありません。同じ言葉を使っていても実際には異なるものを指しており、すなわち議論の前提が揃わない。データを見ながら話しているにもかかわらず、話が噛み合わず意思決定まで進まない。そういった状況が生まれます。
サイロ化した組織では、各部門が自部門のみの最適化に注力することで、全体最適の視点が失われることもあります。部署単位のDXは一定の成果を生むかもしれませんが、それが全社的な競争力の向上に直結するとは限りません。部門間の分断が強化されるにつれ、かえって全体最適が遠のくこともあります。このような状況を課題と感じながらも、「バラバラなものを統合するのは難しい」「どうしてもそうなってしまう」と、解決の糸口を見出せないまま悩んでいる企業が多いのも事実です。
問題の先の突破口とは。データが動けば判断も動く
では、このような構造的な課題をどのように解消すればよいのでしょうか。
1つめの課題の解決策は、目的の明確化です。何の意思決定のためにデータを使うのか。すべての出発点はここにあります。目的が定まると、どのデータを見るべきか、何は見る必要がないのかが自然と整理され、収集・分析の方向性が決まります。「使うかもしれないから集めておく」という発想から、「この判断にこのデータを使う」という設計思想への転換が求められます。
加えて、データには鮮度があるという観点も大切です。意思決定に使うデータは、必要なタイミングで最新の状態で取得することが重要です。レポート作成に時間がかかり、数週間前のデータをもとに判断した場合、迅速な意思決定は難しくなります。
2つめの課題の解決策は、部門間の目的と前提の統一です。どの時間軸で、どの指標を、誰が判断に使うのかを事前に合意することができれば、データ解釈のズレを防げます。現場が日単位で稼働状況を確認し、管理者が週次で改善要因を比較し、経営層が月次で投資対効果を評価する。それぞれに適した粒度と視点で情報が届く状態を設計することで、部門間のすれ違いを解消します。
こうした全社的な変革はトップダウンで方向性を示す号令があると、組織全体が同じ目標に向けて動きだしやすくなります。
3つめの課題の解決策は、データの統合と標準化です。部門ごとの定義や単位を揃えることで、データを一元的に扱えるようになり、分断されたデータを横断的に分析することが可能になります。
ここでは単なるデータ統合にとどまらず、業務やKPIに紐づいたかたちで指標の再設計に進むとよいでしょう。例えば稼働率の定義を全社で統一するだけでも議論の前提が揃い、意思決定の質は大きく変わります。
さらに、可視化の設計も併せて見直すことをおすすめします。重要なのはすべてを表示するのではなく、判断に必要な情報だけを判断しやすい表現で可視化すること。どの状態が正常でどこからが異常なのか、どの指標に注目すべきか、その結果としてどのアクションを取るべきか。このような可視化によって、データは意思決定につながります。
製造業のDXが進まない理由は、データが足りないからではありません。データはすでに現場に十分存在しています。必要なのは、「誰が、何のために使うのか」という設計です。目的を定め、前提を揃え、データを全体として捉え直す。その積み重ねによって、これまで思うように進まなかった意思決定のためのデータ利活用が動きだします。DXは日々の判断の質を高めていくプロセスです。その視点に立つことで、着実な成果へとつながっていきます。
(↓)データ活用の現状とギャップ

※データ:設備やシステムから集めた数値、情報:判断に使えるかたちに変換されたデータ
現場のデータを、判断できる情報に変換する「OpreX™(オプレックス) MOM Data Discovery」
横河デジタル株式会社
ソリューション開発センター
事業推進部
製品管理グループ
白﨑真理子 Mariko Shirasaki

部門ごとに分断されたデータ、表計算ソフトによる手作業の集計、そして遅れて届く経営レポート。製造現場に根強く残るこうした課題を変えるのが、横河デジタルの「OpreX MOM Data Discovery(MDD)」です。
MDDは、ERP・MES・LIMS・QMS・PCSなど現場に散在するデータを、領域を超えて収集・統合し、経営層・管理者・各部門長・現場担当者それぞれの目的に応じた情報へ変換するサービスです。BIツールを活用したダッシュボードを開けば、使えるかたちに加工された最新情報を、場所を問わず即座に確認できます。
また、IT・OTコンサルタントや品質管理・エネルギーマネジメントの専門家などが、導入から活用まで一貫して支援することも可能です。これまでお客様に納入してきた様々な知見をもとに、実効性の高い提案を行います。 データを「集める」から「判断に使う」へ。MDDは、その一歩を確実に前進させます。
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製造オペレーション管理データ利活用サービス OpreX MOM Data Discovery | YOKOGAWA
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