課題解決やグループ連携を促進する「ポリネーターネットワーク」

(左)デジタル&テクノロジープラットフォーム DX Business部門 プロダクトマネジメント部 CoE課 統括課長 鈴木智之さん
(中)デジタル&テクノロジープラットフォーム DX Business部門 プロダクトマネジメント部 CoE課 プロダクトマネージャー 魏 洋さん
(右)デジタル&テクノロジープラットフォーム DX Business部門 プロダクトマネジメント部 CoE課 佐藤凌太さん

※本記事は、ソニーグループ様のDXの取り組みを「DX TODAY」の取材コンテンツとしてご紹介するものであり、 横河デジタルが本取り組みの導入・開発・運用支援を行った事例ではありません。

鈴木 私たちソニーグループが推進する「ポリネーターネットワーク」は、グループ内に点在する知見や人材を結びつけ、事業横断での課題解決と新たな価値創出を加速する取り組みです。約11万名の社員が多様な事業領域で活動する弊社では、優れた技術や経験が個々に蓄積されている一方で、それらを十分に活用しきれていないという課題がありました。こうした背景のもと、トップマネジメントの問題意識を起点に本プログラムが立ち上がりました。

従来、社内の知見を探す際には個人の人脈を頼りに紹介を重ねる方法が主流でしたが、目的の専門家、あるいは意思決定者にたどり着くまでに時間を要し、さらには社内探索を断念して外部に依存せざるを得なくなるケースもありました。時間的・金銭的コストの両面で非効率が生じていたのです。さらに、重要な知見であるほどデータ化されずに人に蓄積される傾向があります。つまり、システムだけでは解決できないという課題がつねに付きまとうのです。

そこでポリネーターネットワークでは、この課題に対し「人」を中心としたアプローチを採用しました。グループ内で広範なネットワークを持つ社員をポリネーター(花粉媒介者)として任命。ポリネーターは相談内容に応じて最適な専門家、もしくは意思決定者をつなぐ役割を担います。現在は約60名が本業と兼務しながら活動し、迅速かつ多面的なマッチングを実現。事務局がその活動を支援しています。

(↓)ポリネーターネットワークの全体概要図
組織を超えて社員の専門性とクリエイティビティをつなぎ、ソニーグループ横断のコラボレーション&イノベーションを活性化する

人を起点にした設計で、データ化されない知をつなぐ

 社内に知見を求める相談者は、まず社内の専用ウェブサイト上で自分が抱える課題の背景や目的を整理できます。たとえ言語化が難しい内容であっても、AIとの対話を通じてより具体化することも可能です。その後、事務局が適切なポリネーターを紹介し、そのポリネーターがグループ内の適した従業員とのマッチングを担います。従業員のスキルや経歴だけでなく、性格や相談者との相性、利害関係まで考慮した上での最終判断は、人ならではの役割です。さらに、1つの相談に複数のポリネーターが関与することで、当初想定していなかったアイデアが生まれることも少なくありません。ローンチから1年間で300名近い専門家との接続が実現しました。

「ポリネーターネットワーク」に持ち込まれた相談内容は大きく3つに分類されます。市場動向や知見を調べる「ナレッジ探索」、各分野の専門家を探す「エキスパート探索」、事業間の連携機会を発掘する「コラボレーション機会探索」です。前二者はAIが力を発揮する領域ですが、コラボレーション機会探索では最終的に人と人との相性が重要になります。ポリネーターが介在する意義はまさにここにあります。

印象的な事例の一つがゲーム×リハビリテーション(金融)の事例です。ソニーグループが多様な事業を持つがゆえに生まれる本取り組みにおいて、ポリネーターネットワークでは、体制構築の経験を持つ従業員の紹介や、ソニーグループ内で介護系サービスに実績のあるケースの情報収集をサポートすることができました。本プログラムは想定以上の反響を呼び、グループ内での認知度も着実に高まっています。自身の専門性を別の事業領域で活かす機会が広がることで、挑戦意欲やエンゲージメントの向上にもつながっています。

社歴の浅い社員にとっても、ポリネーターを通じて社内ネットワークに迅速にアクセスできるため、立ち上がり時の不安軽減や情報格差の是正に寄与しています。

佐藤 今後はAIとの連携をさらに進化させます。人が持つ暗黙知や関係構築力とAIのデータ処理能力を組み合わせることで、マッチングの精度と価値創出の幅は一層広がるはずです。人とAIが補完し合うかたちを、このネットワークから実現したいですね。

ポリネーターネットワークは、単なる仕組みにとどまらず、ソニーグループに新たなコラボレーション文化を根付かせる挑戦でもあります。人と技術の力を掛け合わせながら、グループ全体の可能性を最大化していく。その歩みをこれからも着実に、未来に向けて進めていきます。