
※本記事は、三菱地所株式会社様のDXの取り組みを「DX TODAY」の取材コンテンツとしてご紹介するものであり、横河デジタルが本取り組みの導入・開発・運用支援を行った事例ではありません。
弊社のDX推進部は、直接部門が抱える課題の解決を支援する部署として発足しました。ご紹介するAIプロダクトも、中古住宅の売買仲介を担うグループ会社から寄せられた相談を受けて開発したものです。
営業担当者が多くの時間を費やす重要事項説明書。その作成業務を効率化できないかという現場の声からプロジェクトは始まりました。その背景には業務負荷ばかりではなく、一般消費者にも生成AIの利用が広がったことで、事業環境そのものが変わり始めたことがあります。
中古住宅の売買仲介を例に見ると、これまでは不動産会社が物件や相場に関する情報を多く持ち、購入者との情報格差が事業価値の一部になっていました。しかし不動産情報ポータルサイトの普及によって情報は広く公開され、さらに生成AIの登場によって誰でも必要な情報を短時間で収集できるようになったのです。それにより情報の非対称性を前提とした従来のビジネスモデルにも変革の必要性が生じつつあります。
そうした環境変化の中で、現場が着目したのが営業担当者の業務でした。不動産の売買契約では、宅地建物取引士が法律に基づき、契約前に買主へ重要事項について書面を用いて説明することが義務付けられています。そのため、その国家資格を持つ営業担当者が役所やマンション管理会社などへ調査を行い、膨大な資料をもとに重要事項説明書を作成しなければなりません。もちろん書類のひな形はあるのですが、物件ごとに条件が異なるうえ、中古住宅は物件固有の特記事項もあって複雑です。経験に基づく判断も求められるため、そこが大きな負担となっていました。
そこで生成AIを活用した、重要事項説明書を自動で作成する仕組みを開発したのです。最終確認は必ず人が行いますが、どの資料を根拠に記載したのかを一つずつ紐付けて表示する仕組みを加えたことで、確認作業の効率化にもつながっています。
さらに、調査業務そのものも一部自動化しました。例えば、区分所有のマンションの取引を行う際に、マンション管理会社に重要事項説明書に記載すべき事項の有無等の調査を依頼するのですが、提出される報告書の情報量や粒度は、事業者によってかなりの差があります。また手書きの情報がFAXで送られてくることも多いのですが、それをOCRで読み取り、不足する情報があればAIが自ら問い合わせを行う。こうして必要な情報がそろうまでやりとりを続けるという自動化です。これにより、営業担当者は先方にその都度問い合わせる必要もなくなり、他の業務に集中することができるようになりました。AIプロダクトの稼働により、案件によっては10時間近くかかっていた作業を半分以下に短縮できるまでになったのです。
重要事項説明は法令上欠かせない業務ですが、そこで競争優位が生まれるわけではありません。作業の効率化を進めて生み出した時間をお客様への物件提案や売却相談、新たな物件の預かりといった、本来価値を生み出す営業活動へ振り向ける。そのことにこそ意味があるのです。 現在は、この成功体験をほかの業務へ展開し始めています。売買仲介業務全体を見渡し、生成AIを活用できる工程を順次広げながら、将来的には一連の業務を支援するエージェントの実現も視野に入れています。
(↓)中古住宅売買仲介取引効率化の実現

事業の可能性をデータで顕在化させて後押しする
一方で、DX推進部の役割も変わりつつあります。現場からの相談を待つだけでは、すでに課題が顕在化している事業しか支援できません。堅調に成長している主力事業にもより成長してもらいたい。そこで2023年頃からは、グループ共通のデータ基盤を活用し、自ら事業を分析して改善余地を見出し、DX施策を提案する取り組みを進めています。
私はDXの目的は単純な業務効率化ではないと捉えています。効率化はあくまで手段です。DX部門が果たすべき役割はデータをもとに事業の潜在力を示し、現状の延長線上では到達できない目標を描くことです。そのストレッチ目標が新たな発想を引き出し、ビジネスモデルの変革につながる。その挑戦を後押しすることこそ、DX部門の使命だと考えています。