
※本記事は、三菱地所株式会社様のDXの取り組みを「DX TODAY」の取材コンテンツとしてご紹介するものであり、横河デジタルが本取り組みの導入・開発・運用支援を行った事例ではありません。
弊社が担う街づくりの一つが大手町・丸の内・有楽町(大丸有)エリアです。
このエリアにはオフィスビルに加え、数多くの商業施設があり、商業の活性化は重要なテーマとなっています。ほかの商業施設同様、お客様のリピートを促すためのポイントカードを運用していました。しかし、紙のカードではお客様が何を購入し、エリア内をどのように回遊しているのかを把握できません。限界を感じる中で、データを活用した集客と商業施設の売り上げを促進する仕組みをつくるにはデジタル基盤が欠かせないと考えたのです。
そう考えたものの、ポイントカードのアプリ化には大きな投資が必要です。開発だけで数千万円、運用にも継続的なコストがかかるため、費用対効果を疑問視する声も社内にはありました。それでも開発に踏み切ったのは、経験や勘だけに頼る施策には限界があるという危機感があったからです。データをもとに施策を検証し、改善につなげるという発想に転換しなければ、競争力を高めることはできません。日本では2019年頃からDXへの機運が醸成され、弊社でもDX推進部が発足しました。不動産の知見を持つメンバーに加えてデジタル人材も参画し、新たな挑戦が始まったのです。
2021年4月に「丸の内ポイントアプリ」をリリースしました。紙のカードをデジタル化したシンプルなサービスでしたが、会員登録のほか、ポイント残高や利用可能店舗をいつでも確認できるようになり、利便性は飛躍的に向上しました。それに併せて会員も順調に増え、さまざまなデータの蓄積が始まったのです。
こうして蓄積したデータを活用し、このポイントアプリを街のプラットフォームへ進化させようと考えました。しかし、このリニューアルは組織内の壁に突き当たってしまったのです。当然ですが、不動産事業を長く経験してきたメンバーとデジタル人材では仕事の進め方も価値観も異なります。さらにコロナ禍で直接顔を合わせる機会が限られ、相互理解に時間を要しました。この事業はテナントあってこそのサービスです。現場担当者の声を丁寧に取り込みながら議論を重ね、2023年に全面リニューアルを実現しました。

街を変えるのはデータの力
ポイントアプリと並行してデータの活用にも取り組みましたが、こちらも順調には進みません。他社とのコラボなどの施策に挑戦したものの、利用は伸びませんでした。そこで原点に立ち返ろうと、会員の関心や利用実態を分析し直し、そこからサービスを再設計したのです。
店舗情報の掲載やクーポン配信、イベント告知など、利用実態に合わせた施策を取り入れたほか、来街時にポイントを付与する仕組みを導入。アプリを開くことで、新たな店舗やイベントとの出合いにつなげることが目的です。
さらに会員数が増えたことでデータの精度が高くなり、施策の効果を数字で把握できるようになりました。その結果、テナント側から「費用を負担してでもアプリに掲載したい」という声が寄せられるようになり、紹介記事を有料で掲載する新たなビジネスモデルも生まれました。最近では、大丸有で働く人に情報を届けたいという企業からの相談も増えています。みずほ銀行様と実施した「みずほNISAカフェ」もその一例で、セミナー参加者にポイントを付与するなど、アプリを活用した情報発信を行いました。
また、データを分析することで、ワーカーの多くは勤務先周辺の店舗を中心に利用し、ほとんど街区を越えていないこともわかりました。どのように行動範囲を広げ、街全体の回遊につなげるかが次の課題です。
販促ツールとして始まったアプリは、企業の情報発信を支援する媒体へと役割を広げ、新たな収益源としての可能性も見え始めています。
私たちが目指すのは、ポイントを貯めるためだけのアプリではありません。季節のイベントや街の魅力を知る入り口となり、リアルな体験をより豊かにするプラットフォームです。グループ全体でIDの一元化も進み、将来的にはホテルなど他サービスとのポイント連携も視野に入れています。データを活用して人と街との新しい接点をつくること。それが、私たちが目指す街づくりのDXだと考えています。